★ 人生は旅と思いぬアイヌ名の川の流るる街に移りき

★ 十勝野のひと際青き空切りて日高の峰へと秋雲つづく

★ 紅葉を求めて入りし大雪の山のいで湯に身体を浸す

★ 長湯して火照る身体に渓風の木々を鳴らして吹き渡り来る

★ 十勝川の源どころ大雪に小さき流れの旅の始まる

★ 何もなき豊かさ知りぬ雪積もる北の原野に丹頂鶴舞う

★ 花便り届きし今日の十勝野は雪原わずかに土の覗きぬ

★ 氷張り流れ狭まる十勝川白鳥浮かぶ身を寄せ合いて

★ 切干しにせむと刻みし大根を十勝晴れなる庭に広ぐる

★ 雲浮かぶ山並み遥か十勝野は夏霜に耐えて薯の花咲く

★ 凍て土の緩めば速し北国の芽吹きははだら雪よりのぞく

★ 枝豆の採り頃計ると鈴なりの実のふくらみを触り確かむ

★ 故郷を遠く離れて北国に福岡県産の茄子を購う

★ 「帰去来」をふと口ずさむ故郷は遠く離れて光を放つ

★ 今しがた手を振り別れし孫の手形ちさきが幾つも鏡に残る

★ 胸ふさぐ悩み持てども未来あるわれ羨(とも)しむと癌の友言う

★ 雪緩む山の斜面に数頭の鹿の新たな足跡残る

★ 吹き荒るる春の嵐に畑土の捲き上げられておぼろ十勝野

★ 間引き菜の根元の双葉も頂きて夕餉の菜のごま和え作る  

★ 命あるものは愛しきさみどりの尺取り虫の椿葉わたる  

★ 名に惹かれ都忘れの花の苗求めて北の大地に植うる

★ 真ふたつに切りて置きたる玉葱の芯青あおと起き上がり伸ぶ

★ 山下る雪解け水のかさ増しぬはだら雪なか蕗のとう摘む

★ ひと日ごと固き根雪の溶けゆきて湿りし土の匂いたち込む

★ 競わさる輓馬は重き橇引きて激しき鞭に坂登りゆく

★ 登校を拒否して固く閉ざす児の部屋より聞こゆる「明日への扉」

★ 施設児は体斜めに構えいて問いたる言葉に粗き口利く

★ 靴下の穴を繕うわが側へ寄りてまどろむ施設園児は