― 母に捧ぐる歌(挽歌) ―


★ 残業の続きし我に言いかねて盲目(めしい)の母の爪長く伸ぶ

★ 常なりし眠りとまがう亡き母にわが小指にてそっと紅差す

★ 生れしより苦労続きの母なれば遺影は笑顔の写真を選ぶ

★ 荼毘終えて仄かな温み残りたる母の遺骨を胸に抱きぬ

★ 骨つなぐ太き金具の混りおり荼毘を終えたる母の遺骨に

★ 事も無げに竹の箸にて係員は母の遺骨を小さく砕く

★ 亡き母の手擦れて黒き身障の手帳戻しぬ深く礼して

★ 賞などに縁無く逝きし母を詠む歌に賜るトロフィー供う

★ 亡き母の節の外れて唄いいる島原の子守唄のテープまた聞く

★ 戸の端の低きところに亡き母の手擦れの後の黒く残りぬ

★ 母の亡き今も変わらぬ位置に置く座椅子に猫の丸く居眠る

★ 母逝きて悲しみ癒えぬ我に娘は妊みし命の動き触れさす