― 遠花火 ―


★ 職場での多くは語らぬ夫なれど夜半の煙草の日ごと増えゆく

★ 灰皿に夫の残せし吸殻のいずれも長く折れて曲がれる

★ 新聞の企業戦士と言う文字の夫と重なる哀しきまでに

★ 何げなき我の言葉に声高く咎むる夫の疲れておりぬ

★ 食欲のわかぬと箸置く夫待たせ厨に手早くそうめんを茹づ

★ 張りつめし夫の心を解さむと肩を揉みおり語りかけつつ

★ 病みてより外出嫌う夫と座し花火の音を遠くに聞きぬ

★ 風さえも肌刺す痛み伴うと夫はひと夏家に篭りぬ

★ 山頂より見下ろす町の我暮らし小さきものと深く息吸う

★ 群れなしてあきつ飛ぶ道ゆったりと夫と歩めば影の寄り添う

★ 回復に向うと書かれし大吉の夫のみくじを高く結びぬ

        (注:夫はつまと読みます)